宝くじ当たったら好きな芸人だけ集めたライブ開く

タイトルの通りです。この下にはないライブの話を一生懸命する文章が続きます。最近はこういった“ない”話ばかりを考え、精神の安寧をはかっています。助けてくれ

 

三大お笑いオタクがよく考えることって「誰と誰のドリームマッチを見たいか」「今年の賞レースのダークホースになりそうなのは誰か」「好きな芸人だけ集めたライブを開けるとしたら誰を呼ぶか」だと思うんですけど、特に最後のやつは考えるの楽しいですよね。あと出囃子とかエピグラフを考えるのも好きなので一緒くたにして記事にしようと思いました。そのようになっています。エピグラフがなんなのかは各自調べてください。かなりかっこいい概念でやっていきがあります。

 

テンプレ

[出順、名前]

出囃子、エピグラフ

雑記:選んだ理由、その芸人の好きなところ  など

 

[1.コウテイ]

出囃子:デスコ/女王蜂

エピグラフ

男の皮膚は赤銅色をして大きい目鼻は怪鳥のような凄みを持った、馬鹿にのっぽな、カインの末裔を思わせるような人間だった。

 ───若杉鳥子「ある遊郭での出来事」より

雑記:最初なのでブチ上がる彼らにしました。完全肯定!!!!!

 

[2.マユリカ]

出囃子:少年よ我に帰れ/やくしまるえつこ

エピグラフ

そうして我々は「世の中腐ってる」と嘆くのだったが、正直なところ、時には、世の中が腐ってるのか我々が腐ってるのか分からなくなることもあった。

───森見登美彦太陽の塔」より

雑記:不穏なボケが好きです。今どうなってるんだろ

 

[3.街裏ぴんく]

出囃子:2D or not 2D/P-MODEL

エピグラフ

噓なものですか。この僕が云うのです。

───京極夏彦魍魎の匣」より

雑記:このエピグラフで「ウソ」ってでかでかと書かれたあのTシャツ着てきたら笑っちゃうな

 

[4.オズワルド]

出囃子:シアトリカル/椿屋四重奏

エピグラフ

「ま、キミ、我慢して今晩だけつきあってくれたまえ。明日からは自由だから」

───坂口安吾「心霊殺人事件」より 

雑記:面白いのになぜか報われないコンビなので今年は報われまくってほしい  伊藤の声が良すぎる

 

[5.金属バット]

出囃子:喧嘩上等/東京事変

エピグラフ

  「世間じゃない。あなたがゆるさないのでしょう」

───太宰治人間失格」より

雑記:バビーン!焦げランブルエッグですわ!

 

[6.レッドブルつばさ]

出囃子:アイデンティティ/サカナクション

エピグラフ

プラットホームに只ただ独り、
ランプを持つて立つてゐた。

───中原中也「桑名の駅」より

雑記:「意地悪しないで抱きしめてよ」というネタのいい感じに情けない演技が好きです  この人はいい感じに情けない演技がうまい  YouTubeで見れます

 

[7:パーパー]

出囃子:スマトラ警備隊/相対性理論

エピグラフ

好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。

───坂口安吾「夜長姫と耳男」より

雑記:あいなぷぅにこれ言ってほしい  普通に

 

[8.吉住]

出囃子:バレリーコ/みきとP

エピグラフ

銀の羊とうぐいす連れて
あたしゃ死ぬまで後つける

───寺山修司「惜春鳥」より

雑記:THE W決勝でやってた与党と野党の恋のネタで議員の女が公職の自分をかなぐり捨てる瞬間があるんですが、私はあれが大好きです

 

[9:ヤマメ]

出囃子:Crazy Dancer/夜の本気ダンス

エピグラフ

彼の肩を捉え、抱きかかえんばかりに顔をすりよせて、おばかさんね、とただ一言、彼の耳許に囁き、怒ったように立ち去りました。

───豊島与志雄「落雷のあと」より

雑記:不定期にヤマメが欲しくてたまらない時期が来ます  ラーメン二郎のようなものです

 

[10:マヂカルラブリー]

出囃子:MAD HEAD LOVE/米津玄師

エピグラフ

それからといふものは、夜昼の区別なく、春夏秋冬、年がら年中、のべつ幕なしの大戦争で、お互に敵に打勝つ手段を考へては、その魔法をつかつて戦ひました。  

───宮原晃一郎「悪魔の尾」より

雑記:ヤマメの後にマヂラブ見ると脳が破壊されそう   脳を破壊していきましょう.   それはそれとしてオーロラかシャドウかいじめっ子やって〜〜!!!

 

[11.ジョウダンアオナナテンパイ]

出囃子:論理空軍/P-MODEL

エピグラフ

もっとばらばらにしなくちゃ!

まだ作業は終わらない。

この人をもっとばらばらにしてあげなくてはならない。

これは親切なんだ。

───桜庭一樹「ばらばら死体の夜」より

雑記:2人の漫才師とは思えないくらいのっそりした出で立ちがめちゃくちゃツボです  のっそりしておきながらコンビ名は「大当たり一歩手前」を意味していて野心が見えるのもいい

 

[12.からし蓮根]

出囃子:バクチ・ダンサー/DOES

エピグラフ

訛りに濁された発音が搦み合い、興奮する
正しく動き激しく拍手する
俺達人形はぎこちなく正確に動き吃々と声高に話す

───佐藤武夫「犬にされたカスペルの話しかけ」より

雑記:2019M-1決勝確定演出が見えています  幻覚ではありません  私は正気です  伊織がクソでかいからそう見えるだけで青空は別に小さい訳ではないのを今Wikipediaで見て知りました   

 

[13.ゆにばーす]

出囃子:ダンスロボットダンス/ナユタン星人

エピグラフ

これは私のお話ではなく、彼女のお話である。 

───森見登美彦夜は短し歩けよ乙女」より

雑記:出囃子、太陽系デスコでもよかったかもしれない  ナユタン星人だいたい似合う  というかタイタンライブのエピグラフが最高だったのでそっちも見てください  脳に直接最高を叩き込みましょう  

 

[14.コマンダンテ]

出囃子:秘密/東京事変

エピグラフ

一個の非職業的職業に従事している尊敬すべき二紳士が、町角の煙草屋の前で日向ぼっこをしながら、ひねもす何ごとか議論し合っている。

───谷譲次「字で書いた漫画」より

雑記:コマンダンテの衣装、政治家と芸人のギリギリの線をついていてすき

 

[15.宮下草薙]

出囃子:ゴーゴー幽霊船/米津玄師

エピグラフ

けれども私たちは、自信を持つことが出來ません。どうしたのでしょう。私たちは、決して怠けてなど居りません。無頼の生活もして居りません。ひそかに読書もしている筈であります。けれども、努力と共に、いよいよ自信がなくなります。

───太宰治「自信の無さ」より

雑記:来週のアメトーク楽しみだな〜  あとチャンスの時間以外でもロケしてほしい  相席食堂とか

 

[16.囲碁将棋]

出囃子:人として軸がぶれている/大槻ケンヂと絶望少女達

エピグラフ

「それはね」と、ゆかりは、新手の質問者の方を見てちょっと顔を赤くして言った。
「どっちもどっちののっぽですわ」

───海野十三「ネオン横丁殺人事件」より

雑記:2018M-1準々決勝のネタ、頭がおかしくなりそうで良かった  コマンダンテとよくライブしてるような気がするけどその2組が並ぶと圧がすごそう

 

[17.ロングコートダディ]

出囃子:ヴィーナスとジーザス/やくしまるえつこ

エピグラフ

やりたいことをやろうとするとやりたくないこともやらなくちゃいけなくてやりたくないことをやらずにいるとやりたいことがやれなくなる。

───西尾維新ネコソギラジカル(上)」より

雑記:エピグラフ西尾維新だけどこの2人自体は森見登美彦作品っぽさが強いと思います  有頂天家族とかに出てたよね?出てない?

 

[18.トンツカタン]

出囃子:お気に召すまま/Eve

エピグラフ

だから

この三羽の鳥は

とぶことをやめて詩を書いたのです

───寺山修司「時には母のない子のように」より

雑記:トンツカタンYouTubeチャンネル、全人類登録しましょう

 

[19.魔人無骨]

出囃子:チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ/マキシマム ザ ホルモン

エピグラフ

日常は僕の目の前にしっかりあるけれど、非日常の入り口だって僕はしっかり確認したのだ。僕は二つの世界の行き来を確保して有頂天になっていた。 

───舞城王太郎熊の場所」より

雑記:「君賢いね。こじるり?」構文つかいたいけどつかう場所無いんだよな  

 

[20.Aマッソ]

出囃子:新しい文明開化/東京事変

エピグラフ

自分がこの身体の主人でいる限り、いつ自分のせいで自分が殺されるか分かったもんじゃない。やりたいことは生きてるうちに、早めにやっておいた方がいい。

───綿矢りさ勝手にふるえてろ」より

雑記:ここ最近は加納のエッセイ普通に紙媒体で欲しい以外の感情を失っています。物欲のレナ

 

[21.ストレッチーズ]

出囃子:自由へ道連れ/椎名林檎

エピグラフ

諸君、異論があるか。あればことごとく却下だ。

───森見登美彦夜は短し歩けよ乙女」より

雑記:ヤマトナデシコのネタ、2018M-1三回戦の中でも1.2を争うくらい好きかもしれない  ここといい魔人無骨といいさすらいラビーといい学生お笑いは魔窟だな

 

[22.スーパーマラドーナ]

出囃子:恋のメガラバ/マキシマム ザ ホルモン

エピグラフ

「……対称の法則に叶うって云ったって実は対称の精神をもっているというぐらいのことが望ましいのです。」 

───宮沢賢治「土神ときつね」より

雑記:スーマラの出囃子大好きなのでそのままにしました  M-1決勝でやったネタ大好きです  

 

 

 

最初は10組くらいでいっか〜とか思ってましたが全然足りませんでした。でも最高は何組呼んでも最高なので大丈夫です。というか好きな人まだいる。今の時点で忘れてるだけ。際限なくなるのでここで終わりにします。みなさんもない話を考えて健康になりましょう

 

 

額縁の外へ

 

 ずっと考えていたことがある。枠を踏み越えることの魅力と、踏み越えられる快感についてだ。

 

 10月か11月あたり、GyaOM-1グランプリ準々決勝の動画が配信されていた。その中にあったDr.ハインリッヒのネタが今でもかなり印象に残っている。かなり面白かったし、今まで見たことの無いような漫才だったからだ。でも、原因は他にもある。

 

 それは「でもね、お客さんがたもそうなんですよ」というセリフだ。

 これだけだと大したフレーズではない。まず、これを言った彼女はそれまでずっとずっと意味のわからない話をしていた。そういうネタだった。意味がわからなく、不思議で、だからこそ面白かった。「こいつ何言ってんだよ」という話を延々と垂れ流していて、なおかつ、それに対する相方の返しもとんちんかんで絶妙だった。つまり、2人だけの世界で完結していたのだった。それで充分面白かった。2人は2人だけで話をしていて、だから観客の私達は意味がわからなくたっていいし、ただ面白がっているだけでいい。大げさだけど、絵画を見ているようだったと言ってもよかった。

 

 その、絵画の中の人物が、いきなりこちらを向いて上記のセリフを言った。動かないはずの筋肉が動き、こちらを見るはずのない目が観客席を見たのである。びっくりした。こちらに話しかけてくると思わなかった。

 もちろん、それはネタの流れをスムーズにするためのひとくだりでしかなく、別に本当に客に、私に話しかけているわけではない。というか芸人としてM-1の予選に出ている以上、マジで2人だけで話していて観客のことを考えていないわけがない。でも私はその時、額縁の中からぬっと手が出てきて、手首をつかまれて引きずり込まれたような気がした。この人たちと私は同じ次元にいるのだと再認識させられた。

 

 

 というような感想を、私はここ1.2ヶ月の間ぼんやり抱えて過ごしていた。言語化する機会がなかったんだけど、わりと頭にこびりついていた。あの瞬間のどきどきは一体何なのか分からなかった。

 でも今日のモンスターハウスでわかった。これは枠を踏み越えられた時の快感だ。

 

 

 もうモンスターハウスについては説明しない。多分今だったらトレンドに入ってるし、ちょっと経ったって「も」って入れただけでサジェストされるだろう。知らない人はその手に持ってる板とかで調べてほしい。あとついでにスタンフォード監獄実験とか調べるといい。

 

 ところで皆さんは赤と青どっちを押しただろうか。まあわりと皆赤一択だったんじゃないかと思う。

 私は、いざ投票権をぽいっと投げてよこされた時に、なぜだかすごく迷ってしまった。民意は赤──「許さない」だろうし、現に一緒に見ていた母親は赤を押せと息巻いている。でも私の中のいちばん生ぬるい部分がそこまですることないんじゃないと青──「許す」に手を伸ばしたがっている。どうすりゃいいんだ。っていうかなんでバラエティ番組でこんなぐちゃぐちゃにならなきゃいけないんだよ。そうこうしているうちにどんどん赤のゲージが伸びていって、いやなんか皆狂ってるなと思い始めた。

 そして、恐れると同時に、かなり興奮している自分に気づいた。

 

 またこの感覚だ。私はこれを知っているのである。真っ暗な部屋のベッドの上、スマホのちっちゃい画面でみたあのDr.ハインリッヒのネタ。「でもね、お客さんがたもそうなんですよ」。

 

 額縁の中から出てきた手が、また私を引きずり込んだのだ。枠を踏み越えられた時の快感。それは、無理やり当事者へと引きずり降ろされた時の高揚感だ。

 あの時、私たちは指先ひとつで決めることが出来た。ただテレビの前に座っていたはずなのに、いつのまにかバラエティを成立させるための一員になっていたのである。そういう意味ではタイガやらんちゃんと変わらない。あんなに気味悪がっていたクロちゃんとでさえ同じということになる。

 

藤井健太郎はやばい人だなあ。私はつくづくそう思った。これではモンスターが一体誰なのか分からない。もしかしたらみんなモンスターなのかもしれない。赤に入れた人も青に入れた人も、豊島園に行ってクロちゃんを見物する人もしない人も、クロちゃんの人権を主張してBPOに抗議を入れる人も、もう関わってしまったからには己の中の怪物性を大なり小なり発露することになる。観客ではいられなくなる。

 

 私の手の中には未だ投票権が残っていた。テレビに表示される赤いゲージとその数字は留まることを知らなかった。なんらかの線を踏み越えることをイメージしながら、私はボタンを押した。